今期の「漢字の使い分け」は、実例を豊富に取り上げます。
校閲者、編集者をはじめ、広く文章に携わる方すべてに「悩ましい」漢字の使い分け。今期は、文芸、ノンフィクションを担当する出版校閲者への聞き取り調査をもとに、実際の校閲の現場で頻出するものや、特に注意すべき漢字にフォーカスを絞り、厳選してお話しします。校閲者、編集者をはじめ、原稿を書く方にも役にたつ漢字講座です。
【日時】2022年
1月25日(火)、2月22日(火)、3月22日(火)
1月25日(火)
2月22日(火)
3月22日(火)
各18:30〜20:00
【会場】本ページはオンライン受講受付のページです。
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【受講料】
9,900円(税込 3,300円×3回分)
神楽坂ブック倶楽部(KBC)会員は受講料が5%割引になります。
【校閲者が目を光らせる「漢字の使い分け」二題】 文:小駒勝美(『新潮日本語漢字辞典』編者/校閲者(新潮社校閲部)
「起源」か「起原」か
ダーウィンの進化論の名著『種のキゲン』。私も『種の起源』だと思っていましたが、『種の起原』もありますから勝手に訂正してはいけません。
固有名詞には正しい文字表記があるのが普通ですが、原著は英語で、題名も"On the Origin of Species" です。中学生の娘の教科書には「種の起源」と書いてありましたが、岩波文庫の題名は『種の起原』、光文社古典新訳文庫は『種の起源』でした。
本邦初訳は1896年でタイトルは『生物始源』、1905年の再訳で『種之起原』となったそうです。起源と起原は意味が同じで、日本でできた熟語らしい。『日本国語大辞典』には「起原」の方が古く、幕末の用例が出ています。
「体制」の意味は広がっている
辞典類によると「体制」は「恒久的、長期的な仕組み。権力」を意味し、「資本主義体制、五十五年体制、戦時体制、教育体制、体制側、反体制」などと使うと出ている。
それに対して「態勢」の方は「準備ができていて、いつでも行動できる状態」を表し、「選挙態勢、スト態勢、戦闘態勢、臨戦態勢、着陸態勢、独走態勢、受け入れ態勢」と使う。
この通りであれば「体制」は社会全体の大きなことで、日常的な「タイセイ」は「態勢」を使えばいいことになる。
ところが、実際にはもっと小さなことに「体制」を使うことが多い。コーパス「少納言」で調べてみると、「乗組員十一名体制」(運輸白書)、「二次医療圏単位での体制の構築」(少子化社会白書)など、公的な文書にもこうした例が見つかる。